静岡県の和紅茶を知る前に、和紅茶とは何か、ということをご存知でない方はこちらを御覧ください。
静岡県は日本で1~2位を争うお茶の生産地です。
「1~2位を争う」と書いたところで、
『あれ?静岡って日本1位のお茶生産地じゃないの?』
と思われるかもしれません。
実は2021年にお茶業界に大激震が走りました。
茶産出額で勢力図に変化 鹿児島、初めて静岡を逆転―念願の首位も悩みは知名度:時事通信
静岡が2位鹿児島県に産出額ベースで負けてしまったのです。
そのため、現在、静岡と鹿児島県は並び立つ2強時代に突入しました。
これは緑茶だけではなくて、紅茶でも同じです。
紅茶の場合は、元々鹿児島が先進地で、後で静岡が追いついた状態です。
今回は静岡の和紅茶について知っていただければと思います。
静岡県の和紅茶について
静岡県は緑茶の産地として知られています。
緑茶の荒茶生産量が全国の36%と2位の鹿児島県の34%、3位の三重県の7%を上回っています。
(令和2年調べ:静岡県の日本一「Myしずおか日本一」 > 茶の都 > 茶の生産日本一より)
緑茶茶の生産が多いなら、紅茶の生産も当然多かっただろうと思われますが、実は違いました。
静岡県の紅茶生産は、実はほぼ0に近い時期が続いたのです。
もともと静岡県の和紅茶がどの様に生産されていたのか、そしてどの様に復活したのか確認してみましょう。
昔、静岡も輸出用紅茶の主要生産地だった
明治から1971年まで、日本では、多くの紅茶を生産していました。
それは、日本国内で飲まれるためではなく、海外に輸出をするためでした。
日本では、まだ紅茶を飲むという食文化がしっかり定着していませんでした。
紅茶といえば、海外から輸入されるもの。
そして、喫茶店などで飲むもの。
その様に思われていたのです。
ですが、日本の紅茶は外貨獲得の農作物として生産され、数千トン単位で輸出されていました。
静岡県も、その産地の一つで、静岡県の島田市金谷の茶業試験場(茶業況研究拠点)にて、紅茶の品種の選抜・交配も行われてきました。
その結果、自由化直前の輸出計画では、「べにほまれ」と「はつもみじ」の2品種の作付面積を増やして2~3000t単位の増産計画を作られました。
ですが、1971年の紅茶輸入自由化を受け、紅茶の輸出が激減し、日本から紅茶の生産がなくなりました。
静岡も例外ではなく、多くの紅茶茶園は緑茶茶園へと姿を変えていきました。
静岡県の和紅茶は、県の『発酵茶ラボ』設立から復活した
和紅茶が消滅したのは、静岡だけではありません。
同じお茶の生産地である鹿児島も同じで、紅茶輸入自由化以後は日本ではほぼ紅茶の生産がされませんでした。
日本国内の紅茶生産が復活しだすのは、1989年平成元年ぐらいからです。
この1971年から1989年までの18年間、日本では数軒の茶農家さんによりほそぼそと紅茶が作られてきました。
たとえばその間の紅茶生産で有名なのは三重県にあった川戸紅茶さんです。
一緒に亀山市で喫茶店を経営していたのでそのお店の提供の紅茶として長年親しまれてきました。
1989年、平成元年ごろから、お茶の主要な産地を中心に、数軒レベルで紅茶の生産を始める人達が登場しました。
大規模ではなく、数キロ単位から。
手探りな状態でした。
その紅茶の復活はいくつかのパターンに分かれます。
- 過去に紅茶の生産研修を受けたことがある
- 父親、もしくは祖父が紅茶を生産していた
- 完全にゼロから作る
このような試みが始まり、2000年を越えると鳥取の紅茶の会の様に、グループが立ち上がりました。
それでも、2010年以前まで静岡では紅茶の生産は積極的ではありませんでした。
この頃の国産紅茶の生産の中心地は、枕崎茶業試験場のある鹿児島でした。
静岡が和紅茶作りが盛んになる景気になったのは、発酵茶ラボの開所でした。
最初は大きな増加というわけではありませんでしたが、ここから徐々に紅茶を生産する茶農家は増加していきました。
日本有数の紅茶の生産地に戻る
この記事を書いている2022年現在、静岡県は日本有数の紅茶の生産地に戻りました。
その原動力には、そもそも静岡がお茶の生産地だったことがあります。
それに加え、2010年以前から紅茶生産に精力的に取り組んだ茶農家さんが多くいたことが挙げられます。
現在でも、その茶農家さん達は、紅茶の生産を続けています。
そして、和紅茶を作る農家として、日本でも有数の茶農家として名前を知られています。
静岡は、バラエティあふれる和紅茶の生産地として、更に注目を集めることになりました。
静岡県の和紅茶の購入方法の調べ方
現在、日本有数の和紅茶の生産地として知られるようになった静岡県ですが、和紅茶を調べるのは一苦労です。
短期間で一気に生産農家軒数が増えたので、普通の人ではその現状を追いかけられません。
そこで、現在代表的な検索方法をご紹介します。
以下の方法を実行すれば、静岡県の和紅茶の8割以上は手に入ります。
和紅茶を購入されたいという方は、ぜひ実行してみてください。
静岡県の和紅茶をネットで検索
最初は単純に検索をしてください。
- 和紅茶 静岡県
- 地紅茶 静岡県
- 国産紅茶 静岡県
- 紅茶 静岡県
など、検索をしてみましょう。
そして検索結果のうち、表示される茶農家さんを一通りチェックしてみてください。
これで、かなりの数の和紅茶を購入することが出来ます。
静岡の茶産地ごとに調べる
次には、静岡県内の産地ごとに調べてください。
静岡県には実にたくさんのお茶の産地があります。
- 西遠地区
- 中遠茶産地
- 牧之原茶産地
- 川根茶産地
- 志太(しだ)茶産地
- 本山(ほんやま)茶産地
- 清水茶産地
- 富士・沼津茶産地
規模は、一地区だけで他の県まるごと、もしくはそれ以上の規模にも及びます。
非常に大規模です。
その地区名ごとに和紅茶を調べてみましょう。
牧之原なら、「牧之原 和紅茶」というように、静岡県全体での検索と同じような感じです。
地区ごとに細かく区切ることで、県単位では取り残した場所を拾うことが出来ます。
他にも市町村名ごとに検索してもいいでしょう。
静岡県というだけでかなりの数の紅茶を調べることが出来ますので、ぜひお試しください。
お茶のイベントを調べる
次に、お茶のイベントを調べてください。
お茶のイベントは、大都市やお茶の産地で行われています。
なぜそういう場所になるかと言うと、お茶のイベントはなかなか人が集まらないからです。
大都市なら、人口が多いので集まります。
お茶の産地ならそもそもお茶に対する認知が高いので集まります。
そのため、政令指定都市ではない、地方の県庁所在地ぐらいではお茶のイベントは開催されにくいのです。
お茶のイベントは開催を見つけにくいものなので、日頃からアンテナを張って探すように心がけてください。
あと、農作物など出品してる手作り市でも売っている場合があります。
近所で和紅茶を扱ってる紅茶専門店を探す
最後に、近くの紅茶専門店に行ってみてください。
数年前までは和紅茶は扱っていないお店がほとんどでした。
ですが、最近は注目度が高まっているので、メニューを増やすという一環で、少数取り扱う紅茶専門店が増えました。
ダージリン専門店など産地を限定していても、特別に扱っている例もあります。
ぜひ、お近くの紅茶専門店に行ってみましょう。
代表的な静岡県の和紅茶について
日本有数の生産軒数と生産量に戻った静岡県の和紅茶ですが、とにかく量がありすぎます。
ここでは、その中でも手に入りやすくて、品質が安定している和紅茶の生産者を紹介します。
「とりあえず、紅茶らしい和紅茶を飲みたい」
という方は、以下の農家の和紅茶を買ってみてください。
その後で、他の農家さんを調べてもいいでしょう。
現在の和紅茶の基準に応えられるようなそんな和紅茶です。
丸子紅茶
静岡の代表する和紅茶といえば、最初に名前が上がるのが丸子紅茶さんです。
元々紅茶の生産の研修を受けており、平成元年頃から再び紅茶の生産を始めた農家さんです。
紅茶の生産の傍ら、毎年、数限りない種類のテストを行っています。
日々、紅茶を始めいろんなお茶の可能性を追求している農家さんとして知られています。
丸子紅茶さんに紅茶の作り方を教わった茶農家さんも多いです。
全国的に「丸子紅茶さんに研修に行け」と言われるくらいです。
取り扱い店舗は多く、基本的に日本中どこでも手に入ります。
ご自身のWEBサイトからはFAXでの注文になりますので、送信時間にご注意の上、注文してみてください。
丸子紅茶・公式サイト | 丸子(日本の紅茶発祥の地)からお届け
益井園
「お茶を萎凋させる」ということを追求している農家さんです。
日本でも数少ない「萎凋した緑茶」を精力的に生産しております。
お茶の加工という面でも全国的に評価は高く、紅茶も全国に多くのファンがいます。
イベントに積極的に参加する農家さんとして知られていています。
大きなお茶のイベントにはだいたい出てきていますので、名前を見たら行ってみてください。
ますいさんちの茶 益井園 | 農薬不使用で、こだわりの「醗酵茶から煎茶」を自園自製する茶農家
静岡紅茶
べにふうきをメインに使った和紅茶の生産で知られています。
高品質な紅茶生産で知られ、紅茶の本場イギリス、グレートテイストアワードを受賞した実績も持ちます。
香り高い紅茶は静岡を中心にファンを広げており、静岡でも注目の専門店です。
井村園
お茶は栽培・加工の方法に寄って、果実香を強くすることが出来ます。
その点に注目をし、茶葉を厳選し、丁寧に加工した紅茶生産を行ってます。
桃の香りがする紅茶は、全てがそうなるわけでありません。
一部のものが香り立つものなので、普段の紅茶生産の中から更に厳選されたロットが使われています。
国内の紅茶コンテストで高い評価を受けており、今、全国にファンを広げている注目の和紅茶です。
釜炒り茶柴本
かぎりなく自然な形での栽培をしており、お茶も手摘みで作られています。
他の農家さんと違って、一気に大量生産出来ません。
ですが、少量生産で高品質なお茶づくりが人気を博しています。
最近では、作った紅茶が国内の紅茶コンテストで高い評価を受け、ますます人気が高まっている注目の茶農家さんです。
グリーンエイト
グリーンエイトは、同じ地域の複数の茶農家さんが集まって作った会社です。
紅茶だけではなくいろんなお茶の生産を行っています。
お茶の販売以外にも、飲食店の運営やいろんな会社とのコラボを行ってます。
幅広く展開しており、ファンを着実に増やしている注目の生産者さんです。
静岡県の和紅茶について、最後に
たった一つの県ではありますが、静岡は紅茶の幅が非常に広いです。
いわゆる一般的なイメージの穏やかな和紅茶を作ってる農家もあります。
インドやスリランカに負けない、ストロングな紅茶を作っている農家もあります。
台湾や中国のような香りの高い紅茶を作ってる農家もあります。
一言で静岡県の和紅茶と言っても、まるで日本の紅茶生産の縮図のように多種多様な紅茶があります。
ワンストップで和紅茶を網羅したいという人には、実はおすすめです。
あれこれ悩まずに、静岡県産の和紅茶を片っ端から買えば良いだけです。
その幅広さから、「自分は一体、どこの紅茶を飲んでいるのだろう」と迷い込むかもしれません。
ですが、そこが和紅茶の入り口なのです。
静岡の和紅茶を通して、通り一遍の『和紅茶』からの卒業をして下さい。
そして、より深い和紅茶のバリエーションを楽しんでください。